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FMラジオから、よく分からない洋楽が流れている。スイッチを入れチャンネルも変えないままに。
「雪すぐにとけて良かった~」
息をする事を忘れていたように瑛太が口を開いた。
――後悔はしたくない。
「恋人契約が終わったら……友達でもなくなるの?」
詩織は勇気を振り絞って、掟を破るかのように答えを求めた。
「ごめん。今日まで、ありがとう」
瑛太の声は少し震えていた。
「こちらこそ、ありがとう。でね。気が変わったら言って。延長でも、本契約でもいいから」
詩織は自然に笑いかけたつもりだったが、また沈黙が車内を支配した。
見慣れた交差点で信号待ちをしていると、瑛太がラジオを消してスーと息を吸う音が聞こえた。
「明後日。明後日の朝、校門で待ってる」
「え!」
「それが今の気持ち」
詩織は真っすぐ前を見つめる瑛太の横顔を見ると、抱きつきたい衝動にかられた。だが車が走り出したので我慢した。
――んーもう!
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