一日だけの二人

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 今朝待ち合わせた詩織の最寄り駅付近の公園で車が止まった。知人に見られないよう、詩織の家がある方角とは反対側の公園だった。もうすっかり暗くなっていた。 「着いたーうわっ」 「ありがとう!」  詩織は瑛太がハンドルから手を離した途端に抱きついた。我慢した結果、嬉しさが弾け恥ずかしさが吹き飛んでいた。 「オッケーオッケー落ち着いて」  瑛太は冷静に体を離すと、詩織の目を見つめた。 「本当は約束するべきじゃないんだけど……詩織との想い出は忘れないって思えるから」 「想い出の方が大事みたい」  詩織がクスリと笑うと、瑛太は視線を外して車を降りようとした。 「あ、寒いからいいよココで」  詩織は腕を引いて止めると、車を降りて運転席側に回った。ドアガラスが開き瑛太が気を付けてねと微笑んだ。。すると車内を振り返った。 「マフラー忘れてるよ」 「あっ」  詩織が一歩ドアに近づいてマフラーを受け取ろうとすると、瑛太がハワイのレイを首にかけるみたいにマフラーを両手で持っていた。詩織が黙って首を差し出すと、マフラーが(うなじ)に触れ、瑛太の手が耳に触れた。 ――顔が近い!  思った時にはお互いの額がぶつかっていた。コツンと心地好い感触。温度が伝わってくる。マフラーを巻くのに夢中な瑛太が額を離した。詩織は追うように一歩近づいた。瑛太の唇が詩織と同じ温度になった。
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