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不思議な契約
――どうしてこうなるかな。
詩織達三人は学校からひと駅離れたコンビニのイートインでお見合い状態だった。校門前で心亜が勝手に約束をして、ここで落ち合う事になったのだ。
「つまり、あなたは。えーと、霧島瑛太さんは。大学を辞めて、あと1ヶ月でヴェネツィア? へ行ったきりになるので、日本の想い出として、一目惚れしたこの本田詩織と、お付き合いがしたい。と」
私をディスっているのか心配しているのか、心亜は話をまとめて確認した。私はただ真っ赤になって俯いている事しかできなかった。
「恋愛として何かを求めてる訳じゃないだ。僕に好きな人との想い出ができたらそれで。一方的なのは分かってる。あと二週間。勉強も教えるし、買い物やお茶をするだけでも。ダメかな?」
詩織は頭上からする声が、自分に話しかけられているのは分かっていた。けれど好きとか、さらっと言われても恥ずかしくて顔を上げられなかった。
「どうする詩織? 変な下心はなさそうだし、拉致とかヤバい事もないと思うけど。嫌なら言いなね。私がハッキリと断ってあげるから」
「嫌。……じゃない」
詩織が男の顔を盗み見ると、満面の笑みで少し涙目にも見えた。何故だか胸の辺りが暖かくなった気がした。
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