不思議な契約

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 心亜はまるでアイドルのマネージャーのように条件を提示した。  連絡先は交換しない。デートは放課後のみ。宿題がある時は図書館デート。それが終わったら普通のデート。ただし食事はファミレス限定。七時には帰宅させること。詩織が嫌な思いをしたら即解除。といったガードラインだった。もちろん親にバレてしまったら一発アウトだ。  心亜は詩織と瑛太に握手を交わさせると、その上に手を重ね「健全にね」と言った。詩織は心亜が(むせ)ほど背中を叩いて、期間限定の交際が始まった。  最初の三日間は図書館デートだけで終わった。詩織には余計な会話がいらないから楽だった。しかし、こんなので彼には想い出になるんだろうかとも思えた。  図書館を出たあとに、散歩をするようになった。時には販売機でホットミルクティーだったり、店頭で出来立てのたこ焼きだったりを買って、公園のベンチで話をした。  詩織はさすがに瑛太は大人だと思った。聞く話すべてが楽しくて、魅力的だった。  渋谷のTURUYAを見て回った帰り、瑛太は大好きなのCDを、こっそりと買ってプレゼントしてくれた。 「欲しいって言ってたじゃん?」  瑛太の言葉に、自分が覚えていない会話まで覚えてるのかと詩織は驚いた。  原宿の竹下通りでクレープを食べた時は。 「瑛太、食べるのヘタクソ~」 「詩織、なんでそんな上手く食べれるの!」  溢れるクリームと格闘する瑛太の姿が可愛くて、詩織は自然と笑うことができた。  表参道で建物に突っ込んで煙を上げている車を見た時は、怖がる詩織にさりげなく話しかけデートコースを変えてくれた。そんな瑛太が凄く素敵だなと思えた。  一週間も過ぎると、もう自分を騙せないくらい詩織は瑛太を好きになっていた。
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