46人が本棚に入れています
本棚に追加
『ヴェネツィアン・ゴンドラ』
パーク内の運河を、ゴンドリエが漕ぐ船で巡る旅。瑛太が行くヴェネツィアを2人で巡る旅。
橋をくぐる時、ゴンドリエに促され、パークを行き交う人に「チャオ!」と挨拶をすると、パークの人々から「チャオ!」と返ってくる。こんなコミュニケーションもゴンドラならではだった。
フィレンツェに実在する橋をモデルにしたという、シーランドで一番大きな橋が見えてくると、頬に冷たい物が当たった。
「わあー」
人々が次々に空を見上げる。
――雪だ。
掌に乗った小さな雪を瑛太と一緒に見つめる。水分が少なく消えるまでにしばらくかかった。少し積もりそうだねと言う瑛太に詩織は語りかけた。
「フィレンツェは、よく雪が降るんだって。でも積もることはないらしいから、珍しい景色が見られそうだね」
「そうなんだ。調べたの?」
「え……好きな人が行く場所だから……」
初めて口にする好きという言葉に、小声になってしまう。
「ん? なに?」
「ううん。心亜が言ってたんだよ」
慌てて心亜から聞いた事にした。
「ココア?」
「友達の……」
「ああ!ココアさんね」
違和感を感じながらも自分の計画を実行に移すタイミングだった。
最初のコメントを投稿しよう!