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「そう。前にも後ろにも動かない。また違う日にはすんなり解決するかもしれないし」
「じゃあ、失敗したり思うようにいかなかったらどうしようって、不安に押しつぶされそうになることはないの」
「それはないかな」
「言い切れるんだ。どうして?」
「じゃあさ、成功の反対って何だと思う」
「成功の反対⋯⋯失敗でしょ」
「俺はね、成功の反対は『何もしない』だと思ってるんだよね。失敗しても、上手くいかなくても、また挑戦すれば成功の可能性はある。でも失敗を恐れて何もしなかったら、そこにはもう何も生まれない」
「⋯⋯確かに」
今まで俺の方を真剣に見つめながら、時々頷き、話を聞いていた彼女は、目を伏せて考え込み始めた。
彼女は今まさに岐路に立っているのかもしれない。不安や焦りが邪魔をして、前に進むことができずにいるような。
「桔梗はどうしたい」
「⋯⋯えっ」
「ややこしいことは一切考えないで、シンプルにどうしたいかを考えてみたら」
「私⋯⋯」
彼女がきゅっと唇を結び、強い表情に変わる。
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