その愛、育ててますか?──誠実

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 しかし、あれこれ考えながら待ち合わせの店に向かっていても、いまだに桔梗が何に悩み、なぜその相談をよりによって俺に持ちかけてきたのか、正直まだ見当がついていない。    俺の思考を巡らせたところで、高校生なら恋愛か友達の悩みか、それくらいしか思い付かない。でもそんな悩みなら、相談する適役の人間なんて彼女の周りにいるはずだろう。もちろん勉強や部活の悩みでも然り。  ただ、『俺がこの相談を聴く適役』だと桔梗が考えたなら、そこ自体に大きな意味があるとは思っていた。  駅前から続くイチョウ並木を5分くらい歩いたところにその店はあった。  ここ⋯⋯だよな。  そこは少しレトロな店構えが特徴的で女子受けしそうなカフェだった。俺の知っている昔の店の面影がいくらかまだそこに浮遊していて、懐かしいような、だからこそ切ないような、そんな気持ちが込み上げる。
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