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日曜日の午前だからか、店内には緩やかな空気が流れ、通り側の窓からはキラキラとした爽やかな光が差し込んでいる。
改めて辺りを見回すと、昔の花屋の名残があちらこちらに残っているのが分かる。
「ここに来ると花屋の匂いとか、お客さんの笑顔とかを思い出すんだよね。いつも私、この店で遊んでたから」
「桔梗、カウンターの所で、よく塗り絵してたよね」
「そう」
「みんな、元気?」
「お父さんは相変わらず忙しい。お母さんは⋯⋯最近、体調の方は落ち着いてるんだけどね」
少し含みがあるような言い方だった。
「あのさ。たっくんが⋯⋯今の仕事をやっていこうと本格的に思ったのって、いつ」
「俺? そうねぇ、まぁ徐々にって感じだけど。最初に考え始めたのは、やっぱり高校の進路決めのときかな」
「今の私ぐらい」
「そう。でもまぁ、今思えば、しっかり考えてなかったなぁとか思うけどね」
「そうなんだ」
「でもさ、あの時の俺なりに真剣に悩んだとは思うし、後悔はないかな」
「反対されなかったの? おばあちゃんに」
「めちゃくちゃされたよ。ふふっ、ボロボロに言われたしね。酷いもんだよ」
「ふふっ、おばあちゃん、言いそう」
「でもこの歳になってやっと、あのとき周りの大人が言ってた言葉の本当の意味が理解できるようになって、あれって有難い言葉だったんだなぁって思うよ」
「⋯⋯うん。大人の言うこともわかる。でもそれ以上に自分の人生だし、後悔したくない」
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