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5
「最後の仕上げをしてあげよう」
ぐったりと横たわる僕を見下ろし、彼は口端を上げる。
僕には首を振る力すらもう残ってはいない。
彼の顔が、すー、っと下に降り、官能が色濃く残る、けれど未だ兆したままの僕の中芯を、ねっとりと口内へ咥え込む。
はぁぁ・・、掠れた吐息が零れた。
じゅぶじゅぶと音をたてながら、彼は僕を舐る。
躊躇いのない、強引とも言える口淫。
快楽なのか苦痛なのか、最早僕にはわからない。
「――――あぁっ・・はなし、て・・っ・・・イ、く・・っ」
彼の肩に指先を食い込ませるように強く掴み、突き抜ける快感に身を任せる。
はぁはぁと荒い息を吐き出して、僕はきつく目を閉じる。
衣擦れの音がして、すぐ横のスプリングが小さく軋み、彼が移動してきたのを感じた。
腕の中に抱き込まれ、髪に顔が埋めらる。
「―――――明日、お前を皆に披露する」
唐突な言葉を告げられる。
意味を理解することができない。けれど、疲れ切った体と思考に、僕は尋ねる事さえ億劫で。
「わかり・・ました・・・・」
それだけ何とか答え、僕を愛しているという男の腕の中に自ら縋り寄る。
「―――――ゆっくりおやすみ。私の慈・・・」
額に柔らかな感触を感じたのを最後に、僕は深い眠りの中に落ちて行った。
「―――――おはようございます」
彼のものではない声に起こされる。
それは酷く懐かしく、僕の心を一瞬で熱くそして苦しく締め付ける、求め続けていた声・・・。
隣にあるはずの体温は既にない。
僕は恐る恐る、声の方に体を向けて、祈るように・・怯えるように・・、ゆっくりと目を開けた。
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