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「――――――ぁ・・・ま、ま・・・ッ―――あぁ・・」
数時間前、ゆっくりと僕の体を快感に浸らせた同じ人とはとても思えない、抑え込んでいた感情そのままをぶつけられるような、息も吐けない激しい行為だった。
何度も気が触れそうになった。何度も助けを乞うた。何度も限界を感じた。
けれど彼は僕を離さなかった。どこまでも深く、そして未だ嘗て味わったことのない恐怖すら感じる快楽を僕に与え続けた。
汗が飛び散って、獣染みた荒い呼吸が部屋に響く。
指を絡ませ繋ぎ合い、僕の両手はシーツに縫い止められる。激しく腰を打ち付けられて呼吸すら飲み込んでしまいそうなくちづけをされた。―――――――僕もそれを望んだのだけれど。
縋るもののない酷く不安定な気分になる。彼の覆い被さる体は自由に動かない。両手は封じられている。彼の膝の後、脹脛の上で力なく跳ねる両脚をなけなしの力を振り絞って、汗ばむ彼の体に巻きつけた。
自然と腰は浮き、繋がる場所が視界の片隅に飛び込んでくる。反射的に目を逸らし瞼を上げて、そこで情欲燃え上がる瞳とぶつかる。
視線が合った瞬間、彼が眩しげに目を細め、ハッ・・・と熱い息を吐いた。
僕たちが繋がっている場所が、僕の意思ではどうにもならない程不規則な収縮を繰り返し、もう何度目かわからない高みに辿り着いてしまう。
「ァ・・・ァ・・・も・・っ――――――めぇ・・・ッく・・・」
「――――――ぁあっ・・・!」
繋いだ指先に驚くほどの力が籠り、彼の手の甲に爪の先が食い込んだのがわかった。
収まらない快楽が僕の体を覆う。腹の奥深い場所に自分のものじゃない熱い飛沫を感じた。
彼の荒い息が顔の横で僕の髪を揺らす。汗に濡れた肌が擦れて吸い付くようで、それも僕の体には刺激が強い。
彼の体温が離れていくのを感じて僕は咄嗟に体を強張らせた。低い呻きが耳に届き、次いで僕の体が起こされた。
胡坐を掻いた彼の上に座らされ、向かい合わせで彼と見つめ合う。
「・・・際限がなくなる」
困惑気味に彼は言い、僕の唇を優しく啄む。
「・・・僕のせいだって、言いたいんですか?」
唇を触れ合わせたままの状態で僕は聞き、少し頬を膨らませる。
「そうだ。慈が俺を離さない」
僅かに唇を片側だけニッと上げて笑い、彼はぬけぬけとそんなことを言う。
「そっ・・・そんなこと・・・ない、です。・・・木崎さんが止めてくれないから・・・」
唇を尖らせて抗議の言葉を返せば、その唇ごとぱくりと食まれた。
「なぁ、そろそろその、”木崎さん”っての、やめてくれないか?つぅか、俺、本当は木崎じゃねぇし」
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