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「ピンポーン」
部屋のインターホンが鳴った。無視しようか迷ったが変な心配をされても困る。仕方なく出るとそこにはアパートの大家が立っていた。
「あのー、すみません。このアパートの入居可能ポイントが600ptに引き上げられましたので、貴方はすぐに退去してください。即刻引っ越し作業を始めてください。」
急だった。俺が住める場所は他にあるのだろうか。
「わかりました、今月中には出ていきます。」
怪訝そうな顔をすると、少し間をおき、大家は言った。
「そうはいってもね、こっちは500ptぽっちしかないあんたを長くおいときたくもないのよ。あんたより良いお客さんもいるし、部長だったってのもどうせ嘘でしょう?少しはポイントを貯める努力しなさいよ。」
正直限界だった。俺の苛立ちはとっくに飽和していた。俺は目の前にいる奴を部屋の中に引きずり込み、思いっきり殴った。
「がっ、やめっ、」
何度も殴った。倒れたので今度は蹴った。泣き声や喘ぎ声が部屋に響いた。
「お願い、たす、けて、出てっ、いかなくっていいから!」
そいつはそう叫んだ。それが目的だったわけではなかったと思う。が、俺は殴るのをやめた。冷めたのだろうか。目で合図を送ると、そいつは泣きながら
「あっ、ありがと、ございます、、」
といいながら、さっさと出ていった。先ほどまでの余韻が残る。恐ろしいほどの虚無感が自分を襲った。
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