ハニー

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タイヤが踏みつけた跡だけ土が見えている森の中の道をハニーは突き進んだ。その跡に挟まれた部分には、ボンネット辺りまで伸びた雑草が行く手を遮るように続いている。 道の左右から伸びた木の枝も時々視界を塞ぐ。 それにしても…とハニーはさっき見たものについて記憶を(さかのぼ)る。それはとても大きく、遠くの空に浮かんでいた。ホバリングのような不安定さは無かったと思う。 中空なのに、そこにある。そんな感じだった。 森の切れ目が見えた。 「待っててよ!」 ついつい声に出しながら言うとハニーはハンドルをガッチリと掴み直した。 車が森から飛び出す。家はもう目の前にあった。 ハニーは家の裏手にある広い作業場へ土埃を立てながら入ると、勝手口ぎりぎりに車を停めた。 エンジンもドアもそのままで家へ駆け込む。 「チャーリー!!」 弟がいるであろう二階の部屋に向かう。 「チャーリー!!チャーリー、どこなの!?」 ノックもせずに部屋に入るが姿がない。 「隠れてないでーっ」 他の部屋も探すが見つからない。ハニーは二階を諦めて下へ降りた。 居間、トイレ、階段下の物入れ、キッチンへと回るがどこにもいない。 「チャーリー、どこなの?」と少し涙目になったとき、冷蔵にぶら下がるホワイトボードが目に入る。 『YUJIのとこいく』 「もう!!なんてついてない日なの?」
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