荒野の三人

2/3
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
岩までは100m くらい。足元は相変わらず悪いままだ。 「夜とか寒くならないかな?」 「わかんない」 「出てきたりしない?」 「どうかな」 「代わりばんこで見張りとかしたほうが良いよね?」 「あのさあ!」とハニーは歩きを止めて腰に腕を当てた。 「あなたよりわたしのほうが年上だけど、たった一つじゃない。あんたも12歳になったんだから自分でいろいろ考えてよ!!」 イーロンは首をすくめながらも「でもさぁ」とまだなにかを言いたそうにしたものの、「うん」とだけ言ってから足を早めた。 岩まで半分くらいのところまで来た。斜めの日差しが二人の背中を温めていた。 「あったかい」 いつの間にか後ろを歩いてたイーロンがそう言った時、ハニーが足を止めて右手を横に上げる。止まれの合図だ。 「なに?」 「しっ」と振り向かずに人差し指を口に当てる。 そして掌をひらひらさせて後退するように促した。 腰を低くしてゆっくり退くハニーに合わせて、イーロンも足を引く。 ただでも歩きにくい石ばかりだ。後ろを見ずに下がっていたため、イーロンが足を取られて足首を捻ってしまった。 「いたっ!!」 後ろを振り返って「しっ!」と言ったハニーに「だって」と言い訳を言おうとしたイーロンの視線が岩に届いた。 「あれ……ハニー、あの岩……見て」 顔をもとに戻したハニーが体ごと振り返って叫んだ。 「気づかれた!走って!!」 「えっ!?」 イーロンの視界で岩がのそりと動くと、そこから手足が生えたように影が伸びるのが見えた。 陽を浴びているのにそれは影だった。 「岩じゃなかったのよ!ばかイーロン、走れ!」 イーロンも慌てて体制を立て直すとハニーがそれを追って走り出した。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!