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岩までは100m くらい。足元は相変わらず悪いままだ。
「夜とか寒くならないかな?」
「わかんない」
「あいつら出てきたりしない?」
「どうかな」
「代わりばんこで見張りとかしたほうが良いよね?」
「あのさあ!」とハニーは歩きを止めて腰に腕を当てた。
「あなたよりわたしのほうが年上だけど、たった一つじゃない。あんたも12歳になったんだから自分でいろいろ考えてよ!!」
イーロンは首をすくめながらも「でもさぁ」とまだなにかを言いたそうにしたものの、「うん」とだけ言ってから足を早めた。
岩まで半分くらいのところまで来た。斜めの日差しが二人の背中を温めていた。
「あったかい」
いつの間にか後ろを歩いてたイーロンがそう言った時、ハニーが足を止めて右手を横に上げる。止まれの合図だ。
「なに?」
「しっ」と振り向かずに人差し指を口に当てる。
そして掌をひらひらさせて後退するように促した。
腰を低くしてゆっくり退くハニーに合わせて、イーロンも足を引く。
ただでも歩きにくい石ばかりだ。後ろを見ずに下がっていたため、イーロンが足を取られて足首を捻ってしまった。
「いたっ!!」
後ろを振り返って「しっ!」と言ったハニーに「だって」と言い訳を言おうとしたイーロンの視線が岩に届いた。
「あれ……ハニー、あの岩……見て」
顔をもとに戻したハニーが体ごと振り返って叫んだ。
「気づかれた!走って!!」
「えっ!?」
イーロンの視界で岩がのそりと動くと、そこから手足が生えたように影が伸びるのが見えた。
陽を浴びているのにそれは影だった。
「岩じゃなかったのよ!ばかイーロン、走れ!」
イーロンも慌てて体制を立て直すとハニーがそれを追って走り出した。
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