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イーロン
イーロンはスケッチブックに今朝摘んできた花の絵を描いていた。
花と手元の鉛筆との間を何度も目線を行き来させ、全てを写し取ろうとするように全ての神経を集中させている。
机の周りには昆虫採取の標本や石の標本が飾られている。全てイーロン自ら集めたものだ。
「イーロン、お菓子食べないの?」
部屋の外から叔母の声がした。
「今行くぅ!」
そう言ったのも3度目だった。
部屋のドアがノックされる。
「入ってもいい?」
「うん」
叔母が部屋に入ってくる。
「今日はなんの絵なの?」
「シロツメクサ」
「うん、いい出来。ダヴィンチの再来ね」
イーロンはやっと叔母の方に向き直って笑顔を見せた。
一昨年のハリケーンで両親を失ったイーロンを、叔母家族は暖かく迎えてくれた。反して伯母の方は連絡さえくれなかった。
叔母家族に子供が出来なかったのも理由ではあったが、元々子供好きでも知られていた。
「さぁダヴィンチさん、もうおやつにしましょう?」
「うん」
イーロンも迷惑を掛けないよう、鉛筆を置いた。
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