5. 御魂の森の隠れ様 その参

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 常にまっすぐ前を見て、自分が正しいと思ったことをする。  父は自身の言葉をきちんと実践していた。人間として、父親として、刑事として。  結果的には命を落とすことになってしまったが、きっと後悔はしていないに違いない。  鉄平の思い出の中の父は、いつも前を見ていた。迷いも、弱さも、決して見せなかった。  と、不意に――  鉄平の脳裏に、映像が浮かんだ。  大きな岩の上に父が座っている。上部が平らになった、ベンチのような岩だ。  高い場所らしく、眼下には夕日に照らされた町並みが広がっている。    静かに町を眺める父の横顔を鉄平は見上げている。  ふと、父の浅黒い肌の上に何かが光った。  涙だった。  涙は父の瞳から溢れ、頬を伝って流れ落ちる。  それでも父はしばらく町を眺めていたが、やがて目元に手を当て、小さく嗚咽(おえつ)を漏らし始めた。  唐突に浮かんだ映像は、そこまででまた唐突に途切れて消えた。
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