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六江良深水の向かった世界
それ以来、あの女は船着き場に来ていない。
最初は気にも留めなかった。あんな奴でも真面目に登校する日があるのだな、と思った程度だった。
数日経って初めて、ついに行ったか、と思い立ち、スマートフォンでニュースサイトを開いたが、女子高校生が入水自殺した、なんてニュースは流れてこない。
それでも奴は、何日経ってもここに来なかった。
私は、奴が生きていようと死んでいようと、別に。
奴が何処に居ようと、今までもこれからも、私の幻と生きる日々は続いていく。
手持ち無沙汰に画面をスクロールすると、隣県の漁網にラブカが引っかかった、というニュースが目にとまった。
意図せず浅場に迷い込み、漁具に入ってきてしまうような深海魚はその多くが既に弱っていて、適切な飼育環境を用意できたところで長く生きられないという。恐らくそれはその場で逃がしたところで変わらない。多くは元の生息深度に辿り着く前に息絶えてしまうのだろう。
液晶の反射光に目が眩んだ私は、電源を切っていつものようにスケッチブックを開いた。
そこには最後に顔を合わせたあの日に描いた、自由に飛び交う魚たちを虚ろに見つめるあいつの横顔が描かれている。
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