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クラス会のお誘い
「ただいま。お帰り」
「お帰り。ただいま」
マンションの狭い玄関で靴を脱ぎながら、健司と声を掛け合う。同棲を始めた私たちは同じ研究所で働いていて一緒に帰宅するので、お互いがお互いを労うように言葉を掛け合うのだ。
鍵をキーボックスのフックに掛けようとした私の手から、バサッとハガキが落ちた。さっき下の郵便受けから取り出したチラシの間に紛れていたらしい。
「何これ?」
拾い上げた健司が「へえ⁉」と驚きの声を上げた。
「六年二組のクラス会のお誘いだって。今時わざわざ往復はがきで!」
「本当に? 健司のところにはLINEで来たわよね?」
彼から手渡されたハガキは、実家の住所から転送されたものだった。幹事が誰かを確かめると、男女一名ずつの名前は最後に学級委員を務めていた二人だった。
新型ウイルスの感染が落ち着いてからというもの、全国的にオンラインではないクラス会が流行しているらしい。
会いたい人に会えないという状況が長く続いたせいで、懐かしい友人たちと顔を合わせて旧交を温めたくなったという気持ちはわからなくもない。
健司は小学校時代の友達とは疎遠になっているものの、同じ中学や高校に進学した人を辿れば何とか連絡がつくらしく、先日、彼の元にもクラス会の連絡が来たばかりだった。
今はメッセージアプリでクラス会への参加を呼び掛ける方法が主流のようだけれど、小学校時代のクラスメイト達とは絶縁状態で、クラスで一人だけ中高一貫校に進学した私の場合は、実家にハガキを送るしか連絡を取る方法がなかったのだろう。ご苦労なことだ。
卒業間近の六年二組の教室が、フラッシュバックのように脳裏をかすめた。あの頃、私はクラスの女子全員から、無視されたり物を隠されたりしていた。
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