6人が本棚に入れています
本棚に追加
第5話-3 万華の領巾
「ただいま。万華やで」
「おかえり」
ウチが居間に行くと御園婆さんが、テレビを食い入る様に見て、手を合わせとった。
「婆さん、何を拝んどるん?」
「ほら、このテレビ、天女の羽衣だって。最近変な事件ばかりでしょ。良い世の中になりますようにって」
とまた、手を合わせて拝んだ。
テレビには、フワフワと飛んでキラキラ光っとる長い布が映り、急に小さくなって消える動画が繰り返し再生されとった。下には『弁天様の羽衣か? 』とテロップが入っとる。
あいつや、間違いない。あいつ、何処をほっつき回っとるのや。
「婆さん、この領巾の画像、何処で撮影されたんかな」
「あら、万華ちゃん、領巾なんて、よく知っているわね」
「ネットで見たことあんねん」
「今は何でもパソコンね。ああ、場所ね。ええと場所は何処だったかしら」
テレビでは、領巾の画像が小さくなり、専門家と称するオヤジがキャスターに向かって喋り始めよった。
「あの羽衣のようにみえる物は、大気中のゴミや水蒸気に光りが当たり、反射して発光しているようにみえる物です。急に消えるのは風で流されたのでしょう。非常に珍しいですが気象現象です」
「そうですか。箱根や貴船神社付近でも同じような目撃情報があるようですね。季節性の物でしょうか。以上、江ノ島上空の画像でした」
良かったな。オヤジよ。そこにあいつが居なくて。あいつ前でゴミだなんて言ったら、締め殺されるで。
さて、箱根と江ノ島それに貴船神社か。ははーん、あいつ龍神さん巡りをしよるな。
せやけど、あれを回収したら、この世界ともおさらばなんかなぁ。
最初のコメントを投稿しよう!