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(1)
「恐ろしいものを発明してしまった」
発明家の友人から、真夜中に連絡を受け、私はいても立ってもいられず彼の家へ駆けつけた。
得体のしれない粘液まみれになった研究室、見る影もない友人の姿、いや、そもそも研究室自体が爆発か何かで木っ端微塵になっているかもしれない、などあらゆる最悪の可能性を想像していたのだが、いつもと変わらない彼の姿に拍子抜けした。
いや、いつもと変わらない、というとやや語弊があった。青ざめた顔に、角張った銀色の水中メガネ、としか形容できないものを装着していたのだ。
「元気かい?」
「ああ、なんとかね。それにしても、こんなに早く来てくれるとは思わなかったよ」
「何を言ってるんだ、親友だろう」
友人はふっと頬を緩めた。
「で、恐ろしい発明ってなんなんだ? 見たところ、世界を滅ぼすような危険物は見当たらないけど」
「これは、世界を物理的に壊すんじゃない。精神的に、分断させるものだ」
おもむろにメガネを外すと、私の方へ向けた。
「かけてみてくれ」
「……安全の保証はあるのか?」
「大丈夫だ、それはただのデータ投影用のインターフェースだから」
メガネをかけると視界の端に「入力待機中…」という文字が点滅しだした。それ以外には特に変化はない。
私が周囲を見渡しているのを横目に、友人はテレビをつけた。最近評判のドラマが映し出された。惹かれ合う男女が、すれ違いを繰り返しながらも最終的に結ばれる、といった内容だ。
「こういうドラマが趣味だったのか。意外だな」
「いいから、見ていてくれ」
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