感謝の言葉で美味になる

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 驚いて顔をあげ,泡にまみれた髪の毛を手で押さえて窓を見たが,水滴のついた曇りガラスはいつもと変わらなかった。音が気になりシャワーを握りしめ,窓に向けて勢いよく水を掛けてみたが,弾かれた水が勢いよく跳ね返ってくるだけだった。 「ねぇ,誰かいるの……?」  わざと大きな声で呼びかけてみたが,返事はなく曇りガラスはいつもと変わらなかった。誰もいないと思っても,不安は収まらず,急いでシャンプーを洗い流し,濡れたままの身体をバスタオルで包み,そのまま駆け足で部屋に着替えに行った。  寝るときに着る用のTシャツとショートパンツをクローゼットから乱暴に引っ張り出し,急いで着ると,濡れた髪の毛をタオルで巻いて駆け足で両親のいるリビングへと向かった。 「お母さん! お風呂の外に誰かいる! 警察!! 警察!!」  その瞬間,両親の顔色が一気に青ざめ,周りを気にするようにして身構えていた。 「あんた! やっぱり昼間に河川敷でお婆ちゃんに会ったんじゃない!?」 「え? お婆ちゃんって,河川敷の?」 「会ったの!? 会わなかったの!?」 「え……会ってはいないけど……」
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