感謝の言葉で美味になる

5/6
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 お婆ちゃんは何も言わず,魚が焦げたような臭いがする真っ赤な鉄の棒を握りしめ,指先でカリカリと音を立てながら歯のない口を大きく開き,首を振りながら聞いたことのない笑い声をあげた。 「ちょっと!! お婆さん!! あんた,なに勝手に他人の家に入ってるんだ!!」 「できの悪い子供の親は,やっぱりダメだねぇ。しつけができていないねぇ。親子ともどもお仕置きが必要だねぇ」 「あんた,なんなんだ! 失礼だろ! 勝手に人の家にあがって! 警察を呼ぶぞ!!」  父親が怒鳴り声をあげたとほぼ同時に,真っ赤な鉄の棒がジュウウウウという音と真っ白な煙をあげながら父親の顎の下から後頭部へと貫通し肉と髪の毛を焦がした。  母親の悲鳴が遠くで聞こえ,目の前で父親が崩れ落ちていくのをなにもできずに見ていた。身体が動かず,全身が震え,失禁しているのすらわからなかった。 「挨拶のできない悪い子供達はお仕置きしなくちゃ。ちゃんと前を見て歩かない子供も大人も全員お仕置きだねぇ。大切な花壇に勝手に入る連中も,しつけのできない親もお仕置きしなくちゃねぇぇぇ」 「え……? 挨拶? 前を見ていない? 花壇?」  次の瞬間,煙の出ている鉄の棒の先端が目の前に現れた。一瞬で激痛と肉が焼ける臭いがし,眼球が軽い音を立てて破裂した。  なにが起こっているのか理解できなかったが,あまりの激痛に悲鳴をあげた。次の瞬間,全身を殴られたかのような痛みとともに身体が壁に叩きつけられ,意識が遠のき,頭の中が真っ白になった。  最後に感じたのは,床に倒れて激しく顔を打ち付けた瞬間だったが痛みなどはなく,スマホの充電がなくなって画面が消えていくような感覚しかなかった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!