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くうとみっちんのとあるにちじょう
「上がったよぉ」
あざとい声がバスルームから聞こえた。
くうが出てくる。
髪から湯気を垂らして、その小さな胸元をタオルで隠している。
なんの欲情もなければひとつも情欲も催さない。
ただ一点、心配事があった。入って5分も経ってないのにもう上がったということ。
「お前はカラスかよ」
「いやぁー、それほどでもー」
「動物に喩えられて照れるのはお前ぐらいだ」
「えへへーみっちんも入ってこれば?」
「じゃあお言葉に甘えて」
「そうそう素直がイチバンっ!」
何も反論しないまま僕はくうと交代して入る。
お湯が溜められていた。朝靄のようなモワモワが室内をためなく覆っている。
視界が白一色に変わる。前が曇って何も見えない。
僕は伊達眼鏡ではないのでいちいち外さなければならない。改めて湯船を見る。くうが本当に湯に浸かったのか心配になる。
「ねぇ、みっちん!」
ふと扉の向こうから声がした。
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