426人が本棚に入れています
本棚に追加
/699ページ
第八部の伍『甘過ぎないブラウニーバー』
好きな相手に喜んでもらえた。
火坑にクッキーを美味しいと言ってもらえたのだ。嬉しくないわけがない。響也のまぶしい程の笑顔で言ってくれたのだから、やはり嬉しくないわけがない。
缶コーヒーを買って来ると言った彼はひとりで行ってしまったが、ついて行くのも勇気がなくて出来なかった。代わりに、真穂や沓木達に褒めちぎられたが。
「やったじゃない、美兎!」
「餌付け作戦成功じゃない、湖沼ちゃん!」
「……ケイちゃん、餌付けって」
「火坑さんみたいな相手には、餌付けぐらいしなきゃ?」
「そうね、桂那!」
女性二人は盛り上がっているが、美兎は少し自信を持っていいのかわからなかった。喜んでくれたが、お世辞かもしれない、と。
まだ数年程度しか、元彼とのトラウマも期間が空いているとは言え、払拭出来たわけじゃないからだ。火坑がまったく違う相手でも、妖怪だからって不安になってしまう。それくらい、美兎はだんだんと不安になった。
すると、真穂から軽くデコピンをされたのだ。
「……真穂ちゃん?」
「すぐに自信持てとは言わないけど、勝手に落ち込むのもよくないわよ?」
「……わかってる。火坑さんは全然違う人だって言うのは」
「根深いわねぇ?」
「……ごめん」
最初のコメントを投稿しよう!