第八部の伍『甘過ぎないブラウニーバー』

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第八部の伍『甘過ぎないブラウニーバー』

 好きな相手に喜んでもらえた。  火坑(かきょう)にクッキーを美味しいと言ってもらえたのだ。嬉しくないわけがない。響也(きょうや)のまぶしい程の笑顔で言ってくれたのだから、やはり嬉しくないわけがない。  缶コーヒーを買って来ると言った彼はひとりで行ってしまったが、ついて行くのも勇気がなくて出来なかった。代わりに、真穂(まほ)沓木(くつき)達に褒めちぎられたが。 「やったじゃない、美兎(みう)!」 「餌付け作戦成功じゃない、湖沼(こぬま)ちゃん!」 「……ケイちゃん、餌付けって」 「火坑さんみたいな相手には、餌付けぐらいしなきゃ?」 「そうね、桂那(けいな)!」  女性二人は盛り上がっているが、美兎は少し自信を持っていいのかわからなかった。喜んでくれたが、お世辞かもしれない、と。  まだ数年程度しか、元彼とのトラウマも期間が空いているとは言え、払拭出来たわけじゃないからだ。火坑がまったく違う相手でも、妖怪だからって不安になってしまう。それくらい、美兎はだんだんと不安になった。  すると、真穂から軽くデコピンをされたのだ。 「……真穂ちゃん?」 「すぐに自信持てとは言わないけど、勝手に落ち込むのもよくないわよ?」 「……わかってる。火坑さんは全然違う人だって言うのは」 「根深いわねぇ?」 「……ごめん」
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