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第一部の壱 湖沼美兎
名古屋中区にある栄駅から程近いところにある錦町。繁華街にある歓楽街として有名な通称錦三とも呼ばれている夜の町。
東京の歌舞伎町とはまた違った趣があるが、広小路町特有の、碁盤の目のようなきっちりした敷地内には大小様々な店がひしめき合っている。
そんな、広小路の中に。通り過ぎて目にも止まりにくいビルの端の端。その通路を通り、角を曲がって曲がって辿り着いた場所には。
あやかし達がひきめしあう、『界隈』と呼ばれている空間に行き着くだろう。そして、その界隈の一角には猫と人間が合わさったようなあやかしが営む。
小料理屋『楽庵』と呼ばれる小さな店が存在しているのだった。
現実と憧れが、こんなにも違うのだと入社二ヶ月目で深く痛感した。
「……おえ、辛っ!?」
(株)西創デザインに入社したばかりの新入社員、湖沼美兎はいわゆる『悪酔い』の状態だった。
理由は、どうしようもない事だ。
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