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甘さの中にほろ苦さがあるココアは決して高級品ではないはずが、いくらでも食べれてしまいそうだ。だが、ここは我慢して、食べ進める手を止めた。
「美味しいですよ、美兎さん」
そして、嘘偽りない感想を告げると、何故か彼女は顔を真っ赤にしてしまったが。
「よかった……です」
恥じらう表情も、本当に愛らしい。その表情をさせたのが自分だと思うと、火坑は心臓が早鐘を打つかのように、気持ちまで満たされていくようだった。
期待してしまうではないか、と聞いてしまいそうになるが今は二人きりではない。
真穂も、沓木に隆輝だっているのだ。いくら火坑でも恥ずかしくて聞けやしない。
火坑が告げてから、真穂達も美兎の手作りクッキーを美味しい美味しいと褒めちぎっていた。火坑も次にプレーンのスノーボールクッキーを口にして、隆輝が持ってきた紅茶を含むと……これはコーヒーの方が合うのではと思った。
なら、劣りはするが缶コーヒーでも買って来ようと、いつも持っている携帯用のマイバックを手に自販機に向かった。
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