第八部の肆『優しいスノーボールクッキー』

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 甘さの中にほろ苦さがあるココアは決して高級品ではないはずが、いくらでも食べれてしまいそうだ。だが、ここは我慢して、食べ進める手を止めた。 「美味しいですよ、美兎さん」  そして、嘘偽りない感想を告げると、何故か彼女は顔を真っ赤にしてしまったが。 「よかった……です」  恥じらう表情も、本当に愛らしい。その表情をさせたのが自分だと思うと、火坑は心臓が早鐘を打つかのように、気持ちまで満たされていくようだった。  期待してしまうではないか、と聞いてしまいそうになるが今は二人きりではない。  真穂も、沓木に隆輝だっているのだ。いくら火坑でも恥ずかしくて聞けやしない。  火坑が告げてから、真穂達も美兎の手作りクッキーを美味しい美味しいと褒めちぎっていた。火坑も次にプレーンのスノーボールクッキーを口にして、隆輝が持ってきた紅茶を含むと……これはコーヒーの方が合うのではと思った。  なら、劣りはするが缶コーヒーでも買って来ようと、いつも持っている携帯用のマイバックを手に自販機に向かった。
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