第一部の壱 湖沼美兎

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 デザイナーになりたいがために、突っ走って突っ走って突っ走まくってきたのに。いざ、希望の会社の新卒採用されたのに、仕事は研修と言う理由で雑務ばかり。  来る日も来る日も、書類整理や使いっ走りばっかりで。初めの頃は、仕事の一貫だと意気込んでいたが……だんだんと、耐えられなくなってきた。  憧れていた広告代理店のデザイナーの仕事のためだけに青春を犠牲にしてきたのに。何がどうして毎日毎日雑務ばかりなのか。  いくら美兎でも、我慢の限界点になってきた。……なので、早めに切り上げてきて今日は自棄酒にしてしまったのだが。あまり酒慣れしてないのは自覚していたつもりなのに、結果は悪酔い。  今にも吐きそうだが、錦まで足を運んだのが悪かった。キャッチやナンパのチャラい男性は見かけても、誰も美兎を助けようとはしてくれない。  女性も、キャバ嬢とかがほとんどなので見向きもされず。  這う勢いで通りから離れようにも、重い足取りだとなかなか地下鉄通路口にも行けなかった。苦しいが、吐くしかないかと思った時。  ちりん、ちりん。  場違いな、風鈴に似た鈴の音が美兎の耳に届いた。
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