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「うそー、おいでよ。東京。」
「そーよそーよ。」
「すごいねー、やっぱり未知は。」
「でも、彼は?」
「もちろん、反対してる。」
「そっか。」
「今更、遠距離もねー」
「智樹くんだっけ?まあ、彼からしたら、面白くないよね。バリバリ女が働いてます!っての。」
「そうなの?」
「まあ、なんとなくねー。」
「プライドってやつよ。それは。」
「それより、りりかは最近どうしてるの?。結婚したいって言ってなかった?」
「えっ、そうなの?」
「結婚の先輩の夏より一言どーぞ。」
「・・・」
「難しいわ。」「結婚って難しい。」
夏は、川口先生の言葉を思い出す。『決して、無理をしないこと、素直に思うことを話すこと。誰もみんな、表の顔と裏の顔をもっている。あなたが、キラキラして見える彼女たちもきっとね。たから、勇気をもって、全部話してみなさい。高校生の頃の友達は、とてもいいと思うわ。きっと、あなたのことわかってくれるわよ。そしてみんなの悩みも聞いてあげるといいわ。いってらっしゃい。』
「もうすぐ、30歳よ。私達。」
「まだ、結婚しなくてもいいって、ほんとに思うの?二人は子供は?欲しくないの?」
夏は静かに言った。
「確かにね。女にとっては、大きな問題。でも、子供は授かりもの。って、言うじゃない。それに、今は出産年齢も上ってるし。」
「私の仕事先でね。すごく素敵なショップのご夫婦がいるの。子供はいらっしゃらないらしくて。でも、なんていうか、その分、二人の生活、趣味を楽しんでるみたい。」
未知らしい応え。りりかは、すかさずのっかる。
「へー。それもいいかもね。」
「でも、私は子供が欲しい。」
夏はさらに小さな声で沈んだ目をしてつぶやいた。
「夏」りりかは、気が気じゃない。
「夏はそうか、子供はまだなのね。」気さくに未知は尋ねた。
「そうなの。結婚してもう、8年が経ったのよ。さすがにどうしようって。」
「そっか。もしかして不妊治療とかしてる?」未知は思いのほか、どんどんと踏み込んでいく。ハラハラしながらも、りりかは、未知が一緒で良かったと思っていた。
夏は首を横に振った。
「信也さんは?子供のこと何も言わないの?」
「彼、浮気してるの。」
「うそ。。」
夏のぶっちゃけトーク。などと、内心りりかはびっくりしていた。彼女の性格から、浮気されてるなんて言葉にするとは思っていなかったから。しかし、アイツ、優のいった通り、とんでもないやつだわ。
「ほんとなの?でも、この間、仲良く美術館に来てたじゃない?」
「そうなの?」
「言ったじゃない、そこで偶然会ったって」
「そうだったっけ?」
「もう。」
「そんなことより、夏のことよ。一大事よ。」
「夏、もし彼がほんとに浮気してるなら、子供は居ないんだし、別れるって選択肢もあるんじゃない?」
「それは…」
「彼のこと好きなの?」
「それは…」
別れる。考えてもみなかった。離婚。私の人生計画には当然ない二文字。彼は、私と一緒に居たいと言っていた。浮気していたはずなのに。何故?そんなことがあるのだろうか。
「で。彼は?浮気認めたの?」
夏はまた首を横に振った。
「彼には何も言ってない。」
「えっ、じゃあ浮気してる証拠は?」
「特にないけど、ただ、寝言でなつみって。」
「えっ?ホントに?聞き間違いなんじゃ。夏だったんじゃやいの?」
「それはないと思う。」
「うーん、信也さんだっけ?カマかけてみる?」
「なつみって女に心当たりあったら、動揺するんじゃない?」
「そんなことする意味ある?」
「だって、悔しいじゃない?浮気なんて、許せない!」
「してないならないで、なつみって名前にも無反応かもしれないじゃない。」
「まあ。そうだけど、モヤモヤするくらいなら、ストレートに聞くほうがいいわよ。」
「でも認めないかもよ。」
と、私達は当の夏の気持ちも考えず、二人で、あれやこれと言い合いをしていた。
「でもね。私達は結婚してるの。二人とは違うのよ。もし、浮気していたいとしても、していなかったとしても、簡単には別れられない。」
二人は、この夏の言葉に黙り込んでしまった。
「それにね。もう、たぶん、2年は経つと思う。」
「彼の浮気?」
「ううん、なつみではなく、彼は私を選んでくれた。」
「そうなの?」
「じゃあ今は浮気してないってこと?」
「たぶん。」
「じゃあ、何?何を悩んでるの?」
「子供が欲しいの。」
夏はもう一度そう言ったのだ。
しばらく悩んだが、りりかはその日の夜、信也に、連絡をとった。
「あなたは、夏のことをどう思っているの?」
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