東京

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「東京に、今度の休み行こうかな」 「ほんとに?来れるの」 「ああ、次の3連休でさ。」 突然智樹からの提案。嬉しい。 と、同時にどうしよう。と、戸惑った。 休み明けには、大事な取引先にもっていく資料が必要になる。もしかしたら、この休みは、仕事をしないといけないかもしれない。と思っていた。なんとか、週末までに終わらせることができるだろうか。そんな思いが頭に浮かんでくる。 でも、智樹に会わなくっちゃ。 「未知、元気そうで良かった。」 「うん。」 「慣れない東京で、大変じゃないかと思ってた。」 「まあ、でも、福岡の前に、少しだけだけど、東京にいたし、毎日、会社と仕事先と家に行くだけだし、まだ、仕事先には先輩同行だからね。ほんとに大変なのは、これからかも。」 「そうか。」 「うん、引き継ぎがたいだい終わってきて、これからは、自分一人になる。明日は特に大きな取引先に行くのよ。これから任される中では。だからね頑張らないと。」 「そうか。」 「それにね。」 「あっごめん。」 智樹の携帯が鳴った。 ちらっとみて、そのままにしている。 「いいの?」 「ああ、別に今じゃなくても。」 電話が鳴りやんだ。 「あっ、でも、そうか、これからずっと未知と一緒だし、どっかで、電話しなきゃいけないか。」 そう言って、席を立ち、 「やっぱ、ちょっと要件聞いてくるわ。」 と、そのまま店の外へと出ていった。 未知は、休み明けの仕事のことを考えていた。多分大丈夫。間違いなくできているはず、本来なら休みに入る前に、先輩に見てもらいたかったが、そこまての余裕はなかった。休み明けに、少し早めに行ってチェックして、すぐに見てもらえれば、大丈夫だろう。 「ごめんな。」 智樹がそう言って席に戻ってきたとき、未知はひどく疲れた顔をしていた。 「どうした?」 「ううん、ちょっと、ほんとは昨日寝付きが悪くて、少し寝不足気味なの。」 「大丈夫なのか?」 「うん、なんか、智樹が来ると思うと気持ちが高まっちゃったのかな?」 未知は、なんとなく、本当のことが言えず、こう言って照れたように笑った。 「嬉しいな。じゃあ次行くか。」 そんな未知の気持ちがわかったのか、それとも別のことを考えていたのか、智樹は少し複雑な顔をしている。
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