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「柴崎、相変わらずだなー。よく飲む。」
「まあ、これ無くしたら、俺じゃないし。」
「奥さん大丈夫なのか?」
「大丈夫って?」
「だって、まだ子供も小さいし、早く帰って欲しいじゃ?」
「ああ、まあ、いつもじゃないし、たまにだよ。智樹とは久しぶりじゃないか。そんな日に早く帰ってこい、なんて言わせないよ。」「そういやあ、この前水嶋さんに久しぶりに会ったよ。あっ、会ったっていっても偶然な。」
「そうか。どうしてるんだ?」
「さあ?詳しくは知らないけど、会社は辞めてフリーで仕事してるって言ってたな。」
「へえ、すごいな。」
「まあ、彼女らしいかもな。気が強いわけでもないけど、なんか、芯が通ってる感じっていうか、女だけど、なんか対等に付き合えるって感じ、だからまあ、別れもあっさりしたもんだった。」
「ふーん。」
「さすがに、今は浮気してないのか?」
「俺?まあ、それはなんとも。してるっちゃあしてるけど、彼女みたく何回も会うってのはないな。その場限りの適当な相手ならまああるよ。」
「ふーん。」
「なんだよ、智樹。なんかあるのか?」
「いや、別に。」
「怪しいな。前のお前なら、例え遊びでも、それはえりちゃんがかわいそう、って言ってたろ?なんかヤバいことになってるんじゃないのか?」
「修羅場になるよーな女に手を出すなよ。見極めが肝心。」
「・・・」
浮気かあ。浮気だよな。でも、玲奈とは真面目に付き合ってる。好きだから付き合ってる。柴崎とは違う。って、言えないか、言えないよな、やっぱり。
柴崎が席を立ったとき、なんとなく携帯をみると、玲奈からのメーセージ。お誕生日おめでとう。いつのまにか、0時を回っている。
『ありがとう。今日も仕事に追われて遅くなって…そろそろ寝よーとしてたとこ。土曜日楽しみにしてるよ。』
また小さなウソをつく。
「智樹、お前、二股はやめとけよ。」
席に戻るなり、柴崎はこう言ってくる。
「なんだよ、それ。」
「いや、東京の彼女その後どうしてる?」
「元気だったよ。この前の休み、東京行ってきたんだ。」
「そうか。」
「仕事、大変なんだろうけど、充実してるみたいでさ。正直、あいつがなんでも一人で決めて、結局俺ってなんなんだ。って、卑屈になってるとこもあってさ。」
「でもさあ、なんか、東京で未知と一緒にいたら、なんていうか、こっちにいた時とは違うんだよ。一生懸命なんだなー。って。こっちにいる時は、割と俺がいろいろ話してるほうで。あんまり未知は仕事のこととか話さなくて。でも、なんか今大変なんだけど、やりがいがあるのか、いつもよりも饒舌でな。」
「俺の好きな未知だ。って、なんか思った。あいつ、出会った頃はこんな感じだったって。なんだろー、うまく言えないけど、俺ももっと頑張んないとなーって思ったり。」
「卑屈になってた自分が馬鹿みたいだった。彼女は彼女らしく一生懸命なだけなんだよ。」
「柴崎だってさ、転職してますますチャレンジしてるわけだろ。俺だけなんか立ち止まって、何やってんだろって。」
「智樹、もし、彼女が大事なら、お前にとって大事な存在なら、東京行けよ。」
「俺はさあ。女に特に期待してない。お前みたいに彼女の考えに左右されることなんてないんだよ。転職だって、たまたま結婚のタイミングだったけど、別にそれが理由じゃない。奥さんがどんな人でも、まあ、実際関係ないんだよ。」
「えっ?どういうことだよ。」
「たまたま、子供がてきた。それだけだ。子供はかわいい。俺の分身だからな。」
「えりちゃんだから、結婚したわけじゃない、俺にとっては結婚って、そんなもんだ。でも、お前は違うだろ。」
「・・・」「そうだな。」
「もし、お前が東京の彼女以外に、二股かけるようなことがあったら、間違いない。どっちも失うことになるぞ。」
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