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次の日『誕生日おめでとう』
未知からのメッセージ。俺は未知の声が聴きたい。
柴咲の昨夜、正確には日にちは変わってたから今日か。あいつの言ったことが頭をよぎる。
未知のことが好きなら。
電話をすると、未知はすぐにでた。
「智樹」
「声が聞きたくなった。」
「この前、久しぶりに会ったばかりなのに。」
「そうだけど。だからかな、余計に。楽しかったよ。一緒にいられて。」
「私も。おかげで、プレゼンもうまく行ったわ。」
「別に何もしてないよ。」
「ううん、智樹と一緒にいたから、たぶん考えすぎないで良かったんだよ。そんな気がする。私の我儘で東京に来て、きっと嫌な思いさせてるって思ってた。」
「そんなこと。」
「ねえ、今度は私が、福岡に帰るわ。」
未知が、帰るという言葉を使ったのをなんとなく嬉しく感じる。ここは帰る場所なんだ。
「今日もね、何社か一人で回るようになって、上司が、評判なかなかいいぞって言ってくれたの」
「引き継ぎだと、どうしても先輩たちと比べられちゃうから、頑張らないとって。でも、やれることもそんなにないし、とりあえずニコニコしとくぐらいだけど。」
「未知がニコニコするのはちょっと心配だけど、変なオヤジに狙われたりすんなよ。」
「なに〜、ヤキモチやいてくれてるとか?」
「まあ、心配は心配。」
俺は何を言ってるんだ。玲奈とのことがあるのに。
「もちろん、気をつけるよ。ニコニコはするけど、女は出さない。」「勘違いされたくないし、仕事ぶりをちゃんと見てもらいたいもん。」
「そうだな。」「未知。」
「ん?」
「いや、なんでもない。」
「何よ。いいかけて。」
「好きだ。」
「って、久しぶりに言おうと思って照れた」
「智樹。」「良かった。この前会ったとき、なんかちょっと寂しいっていうか、なんかうまく言えないけど、智樹に無理させてるんじゃないかって、ずっと気になってたんだ。」
「智樹、私も大好きだよ、言ってくれてありがとね。」
ごく普通に会話が進む。恋人同士であることは疑いようもない。少し前に、会ったとは思えないぐらい、僕らの会話は弾んだ。つきあい始めの頃みたいに。
電話を切ると、玲奈からの着信があったことを知る。どうしよう。
今はどうしても彼女と話す気になれない。身勝手すぎると思うが、気づかなかったことにしようとそのまま電話をおいてしまう。
次の日の朝、メッセージをいれる。
『おはよう。ごめん、昨日電話もらってたんだね。気づかなかった。』
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