花の少女

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 その者が通り過ぎたあとは、草一本生えてはいない。  強い男や、残酷な男を言い表す時、破壊力の凄まじさにこんな言葉を使うことがある。  ここに一人の男がいる。  この男が、その破壊王というわけではない。  それを証拠に、男はボロボロに破けた服を着て、髪を振り乱し、靴も履かず、頬はこけ、肩で息をし、歩く様子もおぼつかない。何よりも、その目が怯えていた。  どこからか命からがら逃げて来たのだろう。  戦か、暴動か、それとも飢饉だろうか。  村にたどり着くと男は倒れた。  村人が駆け寄る。 「これ。しっかりせい」  男は村の人間ではないが、村人は水を与えた。  男は力ない喉で水を飲むと、絞り出すような声で言った。 「はなの・・・花の少女。・・・気をつけろ」  男は力尽きた。 「どこの村の者かはわからんが、かわいそうに」  村人は男を裏山に葬ってやることにした。
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