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能力が高く、社交の場でも立派に立ち回る。どれだけ評判が高くなろうと驕る事もなく、常に京様を立て、京様の事だけを考えて動く。何より桃に何かしようものなら京様が黙っていない。
流石の古株連中も認める他なかった。
俺の仕事は轟家の当主に仕える事だ。主人の幸せこそが俺の存在意義。そして轟家の繁栄こそが俺の悲願。
だから今日も働こう。
「相良さーん、問題発生でーす」
「……何だ」
「桃、今のもう一回言ってみ?」
SPの草間が声をかけると、桃は申し訳なさそうに口を開いた。
「あの、外商の方を呼ぶ頻度を減らしていただければと……。そろそろ資金が厳しくて」
「は?」
確かに最近外商が来る頻度は高いが、桃の買い物くらいで揺らぐ轟家の身代ではない。それは桃が一番わかっている筈だ。
「桃、続き」
「轟家の妻に相応しい物を身に着けるようにと京様が外商の方を呼んでくださるのですが、轟家で頂いたお金はその……ここを出た日に寄付してしまったもので四年分の貯金しかなく……」
一瞬沈黙が流れた。草間を見れば、呆れたように一つ頷いて見せる。
「……桃、早急に今までに使った金額を計算しなさい。すぐに轟家から補填します」
「そんな! 私のために使うわけには!」
「お前もう轟家の女主人なんだって言ってるだろ! 京様が知ったら泣くぞ! 愛する妻に何でも買ってやりたくて外商呼んだのに妻が自分の貯金切り崩してたなんてさ!」
「桃、それでは京様が妻に何も買えない小さな人間という事になりますが?」
いいんですね。問いかけると、桃は顔を青くして押し黙った。
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