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妻も妻なら旦那も旦那だ。
「相良、相談がある」
「何でしょうか」
真剣な表情に、新しく進めている事業の事か、そうでなくとも会社関係の事かと身構えた。だが内容は思ってもいないもの。
「妻が可愛すぎて辛い」
「…………は?」
――今なんと言った?
「あれは素直すぎるし無防備すぎるだろう、そう思わないか?」
「……はあ」
この人は真面目な顔で何を言っているのだろう。乾いた返事以外何も出てこない。
「何であんなに胸元の開いたドレスで人前に出るんだ」
「それは昔桃を同伴させていた時に京様がそういったドレスばかり着させていたからでしょう」
「屋敷の使用人にも愛嬌を振りまきすぎではないか」
「桃にとってもホームなんです」
「それにしたって……新入りにも笑いかけているんだぞ。男の危険さをわかっていない」
「あなたがそれを言いますか」
そういう環境に置いたのも、桃に手を出していたのも間違いなく京様自身だ。
それでもなお不満げな京様に、嫌味の一つも言いたくなる。
「だいたい、毎日SP用のトレーニングルームを使っていますから男と会わないなんて無理でしょう」
「は? 何だと⁉」
「古巣で仲良くトレーニングしているようですよ?」
「そんな必要ないだろう! 桃はもう使用人じゃないんだぞ⁉」
「体を動かしていないと落ち着かないんでしょう」
「それにしたって男ばかりの場所でやる必要はないだろ! すぐに新しくトレーニングルームを作れ、桃専用のな」
「桃が恐縮します、やめてあげてください」
「なら会社にトレーニング機器を持ってくるか……そうだ、それがいい。桃も連れてきて仕事が終わるまで社長室で好きにさせていよう」
「馬鹿言わないでください!」
結婚してから余計な仕事が増えた気がするのは気のせいじゃない筈だ。
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