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結局、一日中京様の機嫌が戻る事はなかった。こういう日は休みなく働いていただいて、早く屋敷に戻るに限る。
「あと一時間程で戻る。先日注文したドレスが届く予定だったが届いたか?」
「はい、先程」
「ならサイズの確認とか京様にお礼とかうまく言って、桃にそれを着させておいてくれ」
途中連絡も忘れてはいけない。そうすれば全て解決する。
「桃」
「お帰りなさいませ」
「……なんて格好をしている」
「え、あの……先日お選びいただいたドレスが届いたので京様に早くお見せしたくて、ってきゃあっ」
「行くぞ」
あの様子では当分出てこないだろう。
「夕食は二、三時間後でしょう。それまでは皆さんご自由に」
告げれば、出迎えのために玄関に集まっていた使用人達は一斉に動き出した。
「あー、飯食うか」
「最近ゆっくり食べれるな」
「私達も休憩しましょうか」
「とっておきのデザートを出すわね」
思い切り伸びをする者、早速とばかりに早足で去る者、会話に花を咲かせる者。反応は様々だが、皆笑顔なのは変わらない。そんな中、こちらも笑みを携えた草間が近寄ってきた。
「京様、今日は特に早かったですね」
「桃がお前達とトレーニングしている事を知って一日不機嫌だったからな」
「げ」
「大丈夫だ、明日には機嫌も直っているだろう。桃は一日部屋から出てこれないかもしれないがな」
「……それ、桃を犠牲にしているって事では?」
「でも、不幸に見えるか?」
「え?」
「桃が嫌ならやめるさ。でも桃にとって男も、自ら幸せにしたいと思う人間も京様一人だ」
「確かに!」
余計な仕事は確かに増えた。だが屋敷には笑みが溢れている。
「相良さん! 京様と桃の食事、相談させてください」
こんな毎日もそう悪くない。
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