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十八、桐沢菖子
美人は得をする。お金があるのとないのでは断然ある方がいい。顔やお金は関係ないなんて綺麗ごとを言う人もいるけれど、絶対間違いないと思う。
私の人生は生まれた時からイージーモードだった。パパは旧家出身で今はレストランチェーンの社長、ママは元モデル。生まれた時から美人だってもてはやされたし、欲しい物は何だって買ってもらえた。
「菖子、どっちの学校がいい?」
「んー、こっち! 制服が可愛い!」
「じゃあそうしましょ」
中学校はたったそれだけでテストなんて受けずにお嬢様学校への進学が決まったし。
「菖子ちゃん、これノート!」
「ありがと~」
「テストに出るところにマーカー引いておいたから」
「先輩から過去問貰っておいたよ!」
大学は共学に進んだおかげで苦労なんて無縁だった。
スキンケアや小顔体操、スタイル維持。それだけ頑張れば皆がもてはやしてくれる。
通学は日替わりのブランドバッグと新作のワンピース。お昼は学食なんて貧乏たらしい所に行かないで、近くのホテルやレストランの食べ歩き。夜は男友達に美味しい店に連れて行ってもらって、週末は家族で星付きディナー。
それが私の当たり前。生活水準を落とすなんて考えられない。
大学四年生になると周りは皆就職活動なんて言い始めたけれど、私は就職だって困らない。
「菖子、あなたは可愛いんだからうんとお金持ちのお嫁さんになりなさい?」
「勿論! パパよりお金持ちじゃないと無理だもーん」
「それは大変ねー」
「菖子、それなら行儀見習いに行くのはどうだ? パパが話をつけてあげるから」
「行儀見習い?」
「そう。いい家で行儀見習いをすれば拍が付くし、うまくいけば普通なら出会えないような結婚相手を紹介してもらえるかもしれないよ」
「え、それいい!」
行儀見習いが何かはよくわからなかったけど、拍が付いてお金持ちを紹介してもらえるなんてそんないい仕事は他にない。パパにお願いして二日後には私の就職先が決まった。
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