十六、轟桃

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 これもプロポーズ翌日の私の行動のせいらしい。  プロポーズされた翌日も、私は以前の通りに行動した。朝五時に起きてトレーニングルームを使い、軽く汗を流してから朝食のために使用人用の台所に入った。なのに。 「いや、お前の飯ないから」 「え?」  同僚からかけられたのは思ってもいなかった言葉だった。 「朝食の時間変わった?」  でも皆のお皿の上には昔と変わらないサンドイッチやおにぎりといった食べやすい食事が並んでいる。列に並んでいる人もいるから、遅いというわけでもなさそうだ。  だけど、皆の反応は思ってもいなかったもの。 「いや、何言ってるんだよ⁉ お前もう京様の奥様なの!」 「そうよ、ここで食べるんじゃなくて、京様と食べなきゃ!」 「ここで食べさせたら俺達が怒られるわ!」 「でも朝食の時は新聞を……。相良さんにタブレットも用意してもらったから」 「はあっ⁉」  当たり前の事を答えた筈なのに、特に気心の知れた章大には呆れた顔さえされる始末。 「それ絶対別目的で渡されてるからな?」 「ちゃんと前と同じ新聞が登録された物をとお願いして用意していただいたよ?」 「あーもー!」  何故か頭を抱えられ、お皿を取ろうとしてもそれはシェフに奪われる。  でも、結局皆の言い分が正しかったらしい。すぐに京様がいらして、私はそのままダイニングへと連れて行かれた。以前のように椅子の横に膝をつこうとしたけれど、すごい表情をした京様に抱き上げられてそのまま朝食を口に運ばれた。流石に食べさせていただくのは恥ずかしすぎて、折衷案が今の形だ。  相良さんに助けを求めた事もあったけど、自業自得ですと言われて終わってしまう。
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