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身体を離すと、そう聞いた。無理矢理するのは、違う気がして。
彼女はちょっとためらって、そっと俺の頬に手のひらを添わせた。
それが合図になったように、唇が触れあった。今度はすぐには離れなかった。
「ファーストキスみたいだ」
額をくっつけてそう言うと、彼女は微笑んだようだった。
柔らかな彼女の唇の感触が自分の中に残って、その時はそれで満足した。
「帰るね」
身体を離してベンチから立ち上がり、庭を回って車まで戻る。
「また連絡する」
運転席の窓を開けてそう言うと、彼女は頷いて手を振った。
敷地から道路へ出るために一旦停止して、窓から手を出して振ると、フェンダーミラー越しに彼女が手を振ってくれた。
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