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美月の腕を引いて向き合うと、背中に腕を回し、その耳元に口を寄せる。
「あの初めて時は、とにかく美月を抱くので精一杯だったけど、今ならもっとうまくやれる」
そうやって少し茶化して、ごまかした。
彼女は俯いて、俺の肩の窪みに顔を埋めた。
「今の美月がほしい」
しばらく頭の重みを受け止めながら、彼女の返事を待っていた。
でも返事はなかった。だからOKと認識することにした。
そっと彼女の顎を持ち上げて、本格的なキスをした。
柔らかな唇を食んで、角度を変える。
最初は戸惑っていた彼女も、諦めたのかそのうち応えてくれるようになった。
胸を押されて一度顔を離すと、「待って」と言って動き出す。
彼女の身体を離すと、また振り出しに戻ってしまいそうだ。
そのままくっついていくと、彼女は冷蔵庫を開けてビールの缶を2本出した。
「訳が分からなくなるくらい、酔っ払うしかない」
「俺はこれじゃ酔っ払えないけど?」
「まだワインもあるわ」
そう言うと、笑って一本を俺に渡した。
お互い、その缶を開けると、缶をコツンと当てて乾杯し、ぐっと飲んだ。
そうしながら、またキスをして、合間にビールを飲む。
彼女ともつれ合いながら、半円型の窓辺へと寄っていく。
マットレスの上に上がると、窓辺に缶を置いて、クッションに凭れた。
そっと彼女の身体を抱き寄せる。
「あの頃の、続きがしたい」
彼女は束ねていた髪をほどき、頭を振って髪をほぐした。
その髪の間に指を差し込んで引き寄せ、額をつける。
「あのまま、一緒に大人になりたかった」
そう口にしたことで、はっきりと認識した。
俺の中で、愛しいと思う女性の基準が美月になっていることを。
高校時代は幼くて、そんなつもりはなかったけど、会えなかった間も、それが変らなかったことを。
そして未だに、誰も彼女を超えていない、ということを。
もう会えない、彼女とは縁がなかったんだ、と思ったから、他の人と結婚する気になったことを。
「私も、そう思ってた」
腕の中で、彼女が言った。
「ずっと傍にいたかったって」
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