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そう言うと、彼女の身体を抱きしめ、頭の後ろに手を回して引き寄せた。
「今だけは、俺のもの。そうだろう?」
そう耳元で囁くと、彼女の頭が肯定するように揺れた。
しばらくそこで彼女の重みを味わうと、立ち上がって階段を上がる。
2階のフロアに立つと、背中と膝裏に腕を回して抱き上げた。
「美月は軽すぎる」
首に腕を巻き付けて、キスをしてくれる彼女を抱いたまま、クローゼットの前を通り過ぎ、丸い形に置かれた窓辺のソファへ腰を降ろした。
「もっとグラマーな方が良かった?」
「ううん、美月ならどんなでもいい。美月だから、好きで愛おしいんだ」
「うん、分かる。私も光星だから好きで愛おしいんだと思う」
彼女は横座りの体制から手を伸ばし、少しカーテンを持ち上げて外を見た。
「何か見えるの?」
「雨が上がったみたいだから、月が見えるかな、と思って」
カーテンを少し開けて、俺にも外が見えるようにしてくれる。
「見て、細い三日月が出てる」
白樺の木の茂みに縁取られた夜空に、白くて細い、三日月が上がっていた。
周りには、いくつかの星が瞬いている。
…俺たちは月と星だから、一緒の空に上がれる。
そう言って、特別なふたりだと言い合っていた高校生の頃を思い出す。
「月と星だからな」
そう言って、広いソファに背中を預けて目を瞑る。
腕が伸びてきて首を抱きしめると、彼女の唇が俺の口を柔らかく塞いだ。
「不思議」
離れた口のすぐ先で、彼女が言った。
「何が?」
「もう10年以上も経ってるのに、光星とまた、こうやっていられるなんて」
彼女の手が、俺の髪を触る
「大人の男になったね」
「30の俺のは、どうだった?」
「そんなこと、聞かないで」
照れて笑いながら、彼女は言った。
「光星なら、どんなだっていいに決まってる」
ふざけて太ももを触ると、「くすぐったい」と身体をよじった。
「美月は変わらない。ちっちゃくって細くって」
ちゅっとキスをすると、抱き寄せて腿の上に乗せた。
「こうやって腕の中にすっぽり入っちゃうし」
彼女の手が、俺の両脇に流れてきて、胸と胸が重なった。
「ずっと、こうやってくっつきたかった」
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