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美月はそう言うと、俺の肩の窪みに顔を埋めてきた。
腕の中に彼女がいることに満足して、背中を抱きしめながら目を瞑る。
「美月…」
言いかけて、今の俺が何を言っても嘘っぽいだけだろう、と気づいた。
その先を口にすることができず、俺は彼女の頬に手を掛けて、そっとキスをした。
…愛してる
心の中でそうつぶやく。
目を開けると、彼女の瞳が「分かってる」と言ってくれた。
本当は、もっと甘い言葉を言いたい。
…大好きだ
…もう離したくない
…美月と生きていきたい
…どうして美月じゃなかったんだろう
…もっと早く会いたかった
…なんで俺じゃないんだ
…俺だけを愛して
言葉の代わりに、すぐそこにあった唇を塞いだ。
口移しに想いを伝えるように唇を食み、後ろ髪を撫で、抱きしめた。可愛くて愛しくて、離したくなかった。
彼女の腕が、首に巻き付いてくる。
「光星」
耳の辺りで、美月の声が囁く。
「もう一度、抱いて」
思わず、動きが止まった。
「ね?」
耳殻に唇がつけられる。その唇は少しずつ下がり、耳たぶの下の感じるところに触れられて身体が反応する。
「美月…」
唇が首筋を滑り、纏っている布が左右に開かれた。
そのまま胸元へ下がっていこうとする唇に、彼女の本気度を感じる。
一度身体を離させて、動きを止める。
「もう少し筋肉をつけた方がいい。さっきバテてただろう?」
「うん、ごめんね」
そうなのだ、俺が最後までいく前に、彼女のほうがバテてしまっていた。
「気にしなくていい。こうやってまた、美月を可愛がれるから」
身体を腿の上に乗せ、顎をそっと上げさせると唇を塞ぐ。その先までいくよ、と合図を送るように彼女の舌を追った。
腰紐を解き、彼女の身体を覆っていた布を肩から外すと、見えている肌のすべてを覆いつくすように手を滑らせる。それでも、その細い身体は、じきに触り尽くせてしまう。
そんな俺の手の感触に耐えかねて、彼女が縋り付いてきた。
ふいに身体が、さっき彼女の中に入っていったときの感覚を思い出し、一気に体温が上がったのが分かった。
繋がったまま、すべての指と指とを絡め、彼女の少し上気した顔を見下ろしたとき、その先の単純な獣じみた行為が、一番素直な愛情表現であることを感じた。
身体を繋げる喜び、触れ合う肌が生み出す満足感、どんな関係のふたりであっても、その時だけはひとつになれるのだ。
彼女の身体を、子どもを抱くように抱え上げ、そのままベッドに倒す。
「美月…」
狂おしいままに一度、その白い身体を抱きしめる。
「俺に溶けて」
肌を唇でたどり、彼女が身につけていた最後の一枚を脱がせる。
「ひとつになろう」
朝方、一度目が覚めたとき、俺の背中にくっついて眠っている、彼女の温もりを感じた。
彼女の腕は後ろから脇腹を回り、俺の裸の胸に下りていた。
そっとその手を握ると、もう一度幸せな眠りの中に墜ちていった。
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