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翌朝、食卓テーブルで遅めの朝食をもらうと、彼女の作業台の横に掛かっている鏡を見ながらネクタイを締めた。 ふと作業台を見ると、昨日見せてくれた完成品の箱がそのままになっている。 振り向いて彼女を見ると、背を向けてシンクで皿を洗っている。 俺の家人に気づかれるからあげられない、と言われたものだけど、どうしても欲しくなって、黒い二連のブレスレットをそっとポケットに入れた。 知らない顔をして彼女に近づいていくと、手を拭いてこっちを振り返った。 「格好いい」 食卓テーブルにちょっと腰を乗せ、彼女を自分の膝の間に入れて抱き寄せた。 額にちゅっとキスをする。 「来月、また来る」 もう一度抱きしめて、今度は深いキスをする。 「ずっとこうしていられたらいいのに」 冗談めかして言うと、胸を押された。 「さあ、いってらっしゃい」 彼女はそう言って、頬にキスをしてくれた。 「分かった」 仕方なく、身体を起こすと動き出した。
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