moonset

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月末最終週になり、翌週はいつものように彼女の町に行くことにしていた。 土曜日のアポが取れれば、また泊りの出張にできる。そう思って、何ヵ所か電話を入れたけど、なかなか決まらない。 車の中でパソコン上のマップを見ながら、先日開拓したばかりの病院に電話をかけていた時、スマホが振動した。 電話を切ったあと、美月からと気づいて、アプリを開ける。 『ごめんね。 急に明日、出国することになりました。 あの家は、もう手放しました。 だからもう来ないでね。 大切な思い出をくれて、ありがとう。 光星、大好きだよ』 たったそれだけの文字、その下には彼女がそのアプリから抜けたというメッセージ。 しばらく呆然として画面を見つめていた。 いつかこうなることは、覚悟しておかないといけなかったのに、まだ時間はあると思って油断していた。 急に訪れた別れに、気持ちがついてこない。 明日は予定があって、別れを惜しみに行くこともできない。 外回りの予定は終わっていたけど、そのまま帰る気にもならなかった。 その後、どうやって車を運転してきたのか、どこで時間を潰したのか覚えていない。気がつくと、マンションの駐車場に止まっていた。 車の窓から、満月に近い黄色い月が見えた。 あ、月が出てる、と思ったあと、これからも月を見るたびに、美月を思い出すんだろうか、と思ってしまった。 そうやってずっと、美月を心の中で追いかけていくことになるんだろうか。 それはとても辛くて、でも、とても嬉しいことだった。いつまでも美月を忘れずにいられる、から。
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