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次の定例訪問日、帰り際に彼女の洋館に行ってみた。 想像通り、誰もいない。 今回はカーテンもしっかり閉まっていて、中を覗くことはできなかった。 でも、キッチン側の出窓には以前と同じように、いくつかの植物の鉢の影があり、2階の半円型の窓にも前と同じレースのカーテンが掛かっている。 多分まだ、彼女が借りているのだろうと思った。 俺は、バッグから用意してきた封筒を出すと、玄関扉についているポストに入れた。 この場所の正確な住所が分からないから、郵送することもできなかったから。 表には『寺谷美月様』と書いておいた。 万が一、違う人が住んでいたら困ると思って、裏面に自分の名前と携帯の番号、それに『もし表書きに心当たりがなかったら、ご連絡ください』と書いておいた。 『美月へ。 病院へ見舞いに行きたかったけど、それもできそうもないので、手紙にしました。 俺はこの先、何の約束もできないけど、これだけは伝えておきたい。 人生で初めての言葉を言うよ。 …愛してる。 美月がきっと、病気を克服して、ここに帰ってきてくれることを祈ってる。 元気になったら、また会いたい。  会えなくても、美月が元気で、どこかで生きていてくれるなら、それでいい。 だから経過を知らせてほしい            光星』 今日のように、毎月第一金曜日と決めていたこの町の訪問日に、あの友人が来ることはないだろう。 できれば、そろそろ美月が退院して、自分の手でこの手紙を開けてくれることを祈りながら、帰路についた。
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