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次の月、営業回りの予定を終わらせた俺は、いつものようにあの洋館に行った。 美月と最初に再会した日から、半年が経とうとしている。 駐車場の手前で、恐れていたことが起きたと気づいた。 敷地に入る手前に立っている『売り家』の看板。 白い塀にチェーンが掛かっていて、車が入れられないので、その前に寄せると、車を降りた。 ドアにも『売り家』の表示が貼られている。 チェーンをくぐり、前の時のようにアーチ型の窓辺まで行くと、しっかり閉じられたカーテンから中を見ることもできず、窓の内側まで、売り家の張り紙があった。 台所の方へ回っていっても、出窓に置かれていたはずのグリーンの鉢の影もない。 …彼女はどうなったんだろう。 俺が来ることを嫌って、他へ越したのだろうか。 それとも、ここに住めない状況になって引き上げたのか。 車に戻って、運転席から緑に塗られた木の玄関ドアを見つめる。 一番、考えたくなかったことが頭をよぎる。 それは、彼女の生命が消えてしまったのではないか、と言うことだ。 本当のことを知る手段が、俺にはなかった。 友人、という女性の、会社名は覚えているけど、あの人の名前は知らない。 あの日、ドアを開けて、俺を迎え入れてくれた彼女の姿が蘇る。 彼女の仕事机の前で、「光星にはあげられない」と言われ、堪らなくなって抱きしめた。 シンクの前に立ち、皿を洗う彼女の肩に顎を乗せた。 丸い出窓のソファの上で、ビールを飲みながら彼女が酔うのを待った。 冷蔵庫の前で、彼女の口に何度もワインを流し込んだ。 階段の途中に座って、上がってきた彼女を腕の中に抱きしめてキスをした。 2階の廊下を、彼女を抱いたまま歩いた。 ソファに座って、仰向けになって月を見上げた。 彼女が「抱いて」と言って、耳に唇をつけられた。 食卓テーブルに寄りかかり、彼女を膝の間に入れて抱きしめ、キスをした… まるで家の中をカメラで追っているように、いろんな景色がフラッシュバックする。
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