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第二話 誤解が招いた誤解
地下にある牢屋にて、暗い中声が響き渡る。
ノアはあぐらをかきながら頬杖をつき、柵ごしに男と話をしていた。
「貴様、何故ルイ王子の部屋にいた?」
「知らないよ、気づいたらいたんだ」
「何のために?」
「いやだから…」
「何をしてた?」
「あーもうっ!僕にもわからないんだ、いい加減にしてくれよ!気がついたらあそこにいたんだって言ってるだろ」
「貴様、このまま何も喋らんとなると絞刑だぞ?いいのか?」
「えっ?そ、それって死刑ってこと…?ですか…?」
「うむ。しかも苦しみながら死ぬやつだ」
「わ、わかりました本当のことを喋ります。ただし…絶対に信じて下さいよ」
「よし、聞こう」
―――――尋問担当のジミーはため息をついてその場を後にした。
「ジミー、どうだった?何か吐いたか?」
「いやだめだ。あの者、頭をどこかに打ったのかもしれん」
「どういうことだ?」
「住まいを聞いても聞いた事のない地名を答えるし、ルイ王子の部屋に侵入した理由も「自分の部屋で本を開いたらあそこに移動した」などと…とにかく妄想がすごいのだ」
「…そいつもしかして、あの施設から抜け出して来たんじゃないのか?」
「あの施設って?」
「ほら、非公表とされてるあの施設だよ、うつけ者の集まりの…」
ヒソヒソと話していると、突如人影が現れた。ジミーたちが振り向くとルイが階段の上に立っていた。
「おい、やつは何か白状したのか?」
「はっ!る、ルイ王子!!…いえ、まだ何も…」
「…軽い食事でも与えてやれ」
「は、はい!」
「あっ、すみませんルイ王子、そういえば先程伯爵のお嬢様が客間に…」
「なんだよ、また来たのか」
ルイは機嫌悪そうに階段を登っていった。
客間にはシルクのドレスを身にまとった若い女性が立っていた。
ルイが数歩足を踏み入れると、女性はすぐさまこちらに気付いた。
「ああ、ルイ王子!」
「オリビア…何か用ですか?」
「お会いしたかったですわ。あれから随分日が経ちましたから…お元気でしたか?」
「ええ、まあ」
「それで、以前父上が提案した件につきましては、考えていただけたかしら?」
「えっと…すみません、記憶にないのですが」
「わたくしとの結婚についてですわ」
ルイは一瞬凍り付いた。
「いえあの…それは難しいですね」
「難しいということは、可能ではあるのですね?」
「いや、無理です。可能性ゼロですね」
「何故ですの?」
「え、えーと…」
「まさか、他に好きなお方でもいらっしゃるんですの?」
「まあ…そんなとこですね、はい…」
「ならば、その方に会わせて下さい」
「えっ?」
「その方に会わせていただくまで、帰りませんわ。納得できませんものわたくし」
「……」
ルイは断固として動こうとしないオリビアを見て頭を悩ませた。
しばらく沈黙したあとルイは閃いた。
「あっ、それなら…!」
「なんですの?」
「ふっ、しょうがないですね。そこまでおっしゃるなら僕が好意を寄せてる者を今、連れてきます。しばらくお待ちを」
ルイは廊下へ出ると、待機していた兵に耳打ちをした。
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