⑨始まりのあと

1/1
前へ
/9ページ
次へ

⑨始まりのあと

 「祐政、一也、2人とも、よかったよ!」  祐政と一也が直哉の方を振り向くと彼がパチパチと笑顔で手を叩く。   2人は、直哉のにこやかに笑い、彼らを褒めている姿を見て、思わず笑みがこぼれ、互いの顔を見た。  「ラジオ、楽しかったです!やっぱりあなたとやれてよかったです!西澤さん。」「はい!月村さん、僕もあなたとやるのは少し緊張しましたが、次が待ち遠しくなるぐらい楽しかったです!」  一也と祐政は思わず、ハイタッチをする。  それをしみじみと眺めながら、直哉は名残惜しいように呟く。 「2人の雰囲気を潰すのは申し訳ないけど、そろそろ撤収の時間に近づいているから片付けようか。」  「えー嫌だー!もっと西澤さんと話したいし、この雰囲気に浸りたいー!」  それを聞き、一也は腕をぶんぶん振り回しながら子どものように駄々をこねた。  祐政はそれを目を見開きながら、満面の笑みで見つめる。一也の新しい一面に驚いきつつ、この光景が微笑ましく、この時間が永遠に続いて欲しいという気持ちになったからだ。  直哉は、楽しい気持ちを名残惜しそうにする一也を説得させた後、彼と祐政とともにカメラやミキサーなどの機材を片付けを行った。    「それでは、お疲れ様でした。」  部屋が夕方のときと同じようになった後、祐政は終電に間に合うよう、素早く帰りの身支度を整え、部屋を出ようとした。  と、その時。  「あの、すみません。言い忘れていたことがあります。」  一也は祐政の肩をポンポンと叩く。  驚いた祐政はすぐさま振り向き、一也の顔を見た。彼の顔は何かを伝えるような真剣な顔になっている。  「SNSなどでエゴサーチをすること、このラジオと西澤さんのことを書いたネットニュースはしばらく見ないでください!これをしたら、このラジオ、やめる覚悟でいますので。」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加