②あなたと話したいんです。

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②あなたと話したいんです。

 (え、なんで?)  【?】の記号が、祐政の頭の中を支配する。  「別にいいのですが、月村さんの芸能生命や好感度に響きますよ。大丈夫ですか?」  祐政は、落ち着いたトーンで一也のお願いに返答する。  「僕は大丈夫ですよ。たとえ、芸能人生や好感度が無くなって、メディアに呼ばれなくなったりみんなから嫌われても、ファンが1人でもいればそれでいいですし。あと、実は、すでに僕の事務所にもそれについて許可を得てますし、西澤さんの事務所にもお願いしています。」  一也は明るく、しっかりとした声で、返す。どうしても祐政とラジオがしたいという思いをぶつけるように。  その声を電話越しで聞いた祐政は、彼の思いに(えっ。)と少しパニックになりながら一也に問う。  「は、はい。ところで、なんで俺とラジオがしたいのですか?」  すると、一也は、いつもの優しく落ち着いた雰囲気ではなく、力強く感情的な声で話した。  「ある日、役作りのために落語について調べていると、西澤さんが落語家の役をしている映画を観てたのです。これを観ていくうちに、演技力や雰囲気などあなたの魅力に憑りつかれていきました。その後も出演作品や調べていくうちに、ゲームや音楽鑑賞、お笑い鑑賞、ラジオなど他の趣味が合い、(一緒に話がしたい。仕事がしたい。)という気持ちになってきました。しかし、ほぼほぼ休止中なのでかなうわけでもなく…。その時、ぼーっとYouTubeを観ていたら、芸人さんがYouTube内でラジオをしていて(これだ!)と思ったんです。そして、僕と西澤さんの所属事務所と僕の所属事務所に「ラジオをするためだけのYouTubeチャンネルを作りたい。」と連絡し、僕の事務所に許可を得た後、以前、ある撮影の打ち上げの際、直哉があなたのことをよく話していたので(もしかして、友達かな?)と思い、連絡したのです。」  「で、今に至ると。」電話から、直哉の声が少し小さめに聞こえてきた。  祐政は一也の熱い思いに思わずペタンと床にお尻とスマホを持っていない左手をついた。  (すごい熱量だな。こんな俺とラジオで話がしたいのか。しかも、用意周到。さすが、音楽も役者も全てできる人だ…。)  スマホを近づけ、祐政は大きく息を吸い、吐いた。  「わかりました。こちらこそ、宜しくお願い致します。」  そう、祐政は答えると、「ありがとうございます。では、打ち合わせのために直哉に戻します。」と一也は言った。  柔らかな、でも真面目で落ち着いた声が祐政の耳に響く。  「もしもし。では、俺も一也も空いているしあさっての14時にZOOMで打ち合わせをしよう。詳しくはLINEでまた連絡する。じゃあ、バイバイ。」  祐政もバイバイと言うと、LINE電話が切れた。  電話が切れた後、直哉のLINEから一也のLINEのQRコードが送られ、彼のアカウントを追加した。  すぐさま彼のアカウントに『今日はありがとうございました。突然すぎて驚きました。これからよろしくお願いします。』と書き、スマホを机に置く。  祐政が部屋に戻ろうとした直前、太陽の光か台所に入り、明るく暖かなそれが彼を包んでいった。  
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