⑧本番

1/1
前へ
/9ページ
次へ

⑧本番

 「ラジオ部!」「…ラジオ部!」  直哉は2人の声が数秒遅れたのを聞くと、カフを上げ、BGMを流す。  「こんばんは、月村一也です。」「こんばんは。西澤祐政です。」  軽快なBGMをバックに一也と祐政は自己紹介をした。  「さて、時刻は22時を過ぎました。今回からスタートします。僕と月村さんのラジオ『ラジオ部!』。これから毎週土曜日の1時間、僕らのラジオをよろしくお願いします。」  祐政はガチガチの声で用意された台本を読む。  「緊張しなくてもいいですよ。」  その落ち着いた声を聞き、祐政は正面を向く。一也の顔は穏やかな表情でふふっと微笑んでいた。  その笑顔に緊張がゆるんだのか、祐政は笑みがこぼれる。  その後、自分の髪型のこと、好きな音楽のこと、お笑いのこと、ゲームのことなど祐政は“ある事”を多くのことを話した。それを一也はうんうんと頷き、たまに「そうなんだ!」や「楽しそう!」とリアクションしながら彼の話を聞いていた。  2人の会話が弾む中、しんみりとしたBGMになる。エンディングの時間になったのだ。  2人は慌てて、台本をエンディングのページにする。  「エンディングです。現在、僕のシングル…。」一也は自分の作品などを宣伝すると、祐政の方を向く。  「西澤さん、どうでした?」  一也の突然の質問に祐政は目を見開き、少しあたふたする。  「た…楽しかったです!」「よかったです。僕も楽しかったです。」  祐政の焦るような大きな声にも動揺せず、優しい笑顔と声で一也は答える。  これに、祐政もつられて笑った。  そして2人は終わりの挨拶をする。  「ここまでのお相手は月村一也と」「西澤祐政でした。それでは、また来週!」「さよなら!」  2人は時間いっぱいまでカメラの前で手を振った。  「はい、2人とも、お疲れ様でした!」壁に飾ってあるデジタル時計が【23:00】になって10秒後、直哉の声が部屋の中で響く。  こうして、初回の「ラジオ部!」は終了した。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加