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二話 白い箱の内部
「くっ! ――倒しても倒してもきりがない! 」
彼は周囲に跋扈している、青い光に包まれ、奥が透けて見える人間の身体を、二つに裂いた。
二つに分かれたコピー体は、一瞬にして数値に変わり、霧散した。
敵は人間の姿を模したマネキンのようなコピー体。剣を突き刺したとて、身体を真っ二つに刎ねたとて、血が周囲にまき散らされることはない。
言葉も発さない。思考も行わない。――こいつらはただ、まっすぐと襲ってくるだけ。
その証拠に――白い地面は綺麗なままで、紅も死体もありはしない。
倒せば消える。それだけだ。
「これで!!」
フィーニスの剣が、性別の理解もままならないコピー体の心臓部に突き刺さる。最後まで虚無、最期まで単調だった。
数百体以上のコピー体を倒してもなお、金属の輝きを他の色に蝕まれていない、少しカーブがかった片手剣を背中に納刀する。
息の乱れた二人の呼吸音以外の音がない、白く無機質な静寂が身を包む。
「……今回は結構大変そうだな」
「…………そうだね。あと何階層くらいあるのやら」
私の意見にフィーニスは、反駁せずに同意する。
彼と過ごした時間は半年程度だろうか。二人で挑む何個目かの白い箱――今回は、かつてない程の数の敵が襲い掛かってくる。
私達は一息ついた後、新たに生成された扉を開けて、全ての概念を無視した白き迷宮へと足を踏み入れた。
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