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五話 残らない
意識がわずかに残っていたのか――目は開けていないはずなのに、目の前で座り込んでいる少年の姿が確認できる。
「ハハ、アハハハハハハ!!」
少年は無機質な天井を見上げながら、狂ったように笑い……そして涙していた。
「俺は――俺は! また、大切な人を――! フッ! アハハハハハハハハハハハハハ!!」
少年の慟哭。少年の崩壊。少年の――消滅。
赤くなっていた床が、意識の遮断に合わせるように、徐々に白くなっていく。
「ハハハッ。――もう……全部消えろよ……全部死ねよ……全部、全部、全部全部全部! …………こんなっ! ――こんな運命、クソくらえだ!」
彼のさいごの叫びは、白しかない無の空間に儚く散った。
全記憶の削除を確認。攻撃アルゴリズムの蓄積データを移行します。
……………………さようなら。
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